こぐろぐ。

アラサーリーマンの日常

遊戯王の思い出その2。

■スターターBOX

時はまだまだ遊戯王黎明期。

その年の誕生日プレゼントとしてテリーのワンダーランドとめちゃくちゃ悩んだ挙句、僕は遊戯王のスターターBOXを買ってもらった。

初期のスターターBOXはブルーアイズホワイトドラゴンやサンダーボルトなど、当時では最強クラスのカードをまとめて入手可能なデラックスなBOXだった。

弟と等価交換した(大嘘)ブラックマジシャンを含め、スターターBOXを買ってもらった僕のデッキはめちゃくちゃ強力になった。

また、スターターBOXは付属品も豊富だった。

デッキケースはこれまでの輪ゴムから格段と僕をデュエリストに近づけてくれた。

スターチップを1枚弟にあげて(遊戯が城之内君へあげる感じで)デュエルでボコボコにして回収、また上げてボコボコにするという遊びを嗜んでいた。(やってることはインセクター羽蛾)

 

そんな感じでOCG黎明期、僕はめちゃくちゃに遊戯王にハマっていた。

もちろん、周りの友達も同じだ。

漫画やアニメも人気で、小学生の8割くらいはデュエリストだったと思う。

子供が集まる所ではデュエルしてたり、トレードしてたり、自慢してたり…

そんな光景が日常だった。

 

その頃、毎週水曜日はスイミングスクールに通っていた。

放課後、一度自宅に帰り、スクールバスに乗ってプールへ。

もちろんスイミングスクールでも遊戯王は流行っている。

その日、僕は入手したてのブルーアイズホワイトドラゴンや弟と等価交換した(大嘘)ブラックマジシャンを友達に見せびらかしていた。

「すげー!」

「ブルーアイズかっけー!」

「エルフの剣士交換してー」

間違いなくその日の更衣室では僕が注目の的だった。

 

カードのことばかり考えていると練習はあっという間に終わった。

さ、帰る前にこの凡骨たちにもう一度ブルーアイズを拝ませてやるか、なんて考えながら更衣室のロッカーへ戻る。

 

あ!

鞄からデッキケース出したままだった!

とりあえず濡れたらいけないので鞄へ入れておこうとデッキケースを持ち上げる。

 

あれ…?

 

心なしか、いや間違いなく軽い。

 

恐る恐る蓋を開けると中身は空。

 

絶望だった。

 

それからの記憶はすごく曖昧だ。

とにかくずっと泣いていたと思う。

親からはスイミングスクールに持って行く方が悪い!と叱られる。

夜、布団の中でもずっと泣いていた。

あまりにも不憫に思ったのか、弟が母親にもう一度兄ちゃんにスターターBOX買ってあげてよと懇願する。

無論、買ってもらえるわけ無いのだけれど、弟のその心意気には兄ながらあっぱれだったので、またレアカードを等価交換してあげようと思った。

 

■こうちゃん

僕の遊戯王エピソード、いや小中学校のエピソードを語る上で、絶対に欠かせない人物こうちゃん。

3年生から同じクラスになり、後々僕が入っているサッカースクールへ入ることもあり、中学を卒業するまでめちゃくちゃ仲の良い友達の1人。

小学3年で初めてのクラス替え、僕とこうちゃんは席が近いこと、なにより遊戯王が大好きということで意気投合した。

「実はね、昨日スイミングスクールでデッキパクられたのよ」

「マジで?」

「うん、また一から集め直しだわ」

「めっちゃムカつくな〜、犯人見つからんの?」

「他の小学校の奴もいるし絶対無理だと思う」

「そっかー、あ、今度の土曜日ウチで遊ばん?」

「いいけど、俺デュエルできんよ」

「他のゲームして遊ぼうや」

「うん!」

(あぁ、孝太元気かな、トラックの運転手になった所までは風の噂で聞いたけど)

 

そして土曜日の昼下がり。

僕の家からこうちゃんの家はあまりにも遠いので親に車で送ってもらった。

16時には迎えに来るからね、と母。

僕とこうちゃんはこうちゃんの部屋でPSやったり64やったり、セガサターンやったり…

 

こうちゃんは一人っ子のボンボンなのだ。

母子家庭なんだけど、おばあちゃんの店が流行っていて極限に甘やかされて育てられている。

流行りのゲームやおもちゃ、漫画は一通りあるのがこうちゃんの部屋だった。

 

ゲームを終え、やっぱり遊戯王の話題となり、お互いのデッキを見せ合う。

パクられたての僕のデッキは家にあった余りのノーマルカードを攻撃力が高い順に詰め合わせた、最早デッキと呼べる物ではなかった。

こうちゃんのデッキはというと、この前僕がパクられたデッキよりも多くのレアカードが詰め込まれていた。

しかもあのブルーアイズホワイトドラゴンが2枚もあった。

「こうちゃんのデッキめっちゃ強いね!」

「暗黒騎士ガイアめっちゃカッコイイな〜!」

すげえ!すげえ!とこうちゃんのデッキを堪能する僕。

 

「あ、ブルーアイズ1枚あげるよ」

「へ?」

「いいよ。ブルーアイズ。俺2枚持ってるし。」

「マジ?!でも流石にブルーアイズは貰えんよ」

「良いって、今日遊んでくれたし」

「は?」

(内心、最新のゲームを堪能させて頂いたという気持ちだったので驚きが隠せない)

「あげるよ」

「…良いの?」

「うん、だからまた一緒に遊戯王やろう」

「うん、ありがとな!(なんだコイツ!)」

 

こうちゃんは漫画で見るような嫌な金持ちキャラではなく、マジで良い奴だった。(そしてマジで馬鹿なのは後々書いていこうと思う)

友情の証にもらったブルーアイズホワイトドラゴン。

しばらくしてこうちゃんのブラックデーモンズドラゴンと交換した。